「スプー」に見るデジタル・コンテンツのあり方


ITmedia News:「スプー」削除の舞台裏 「YouTube」にテレビ局苦慮YouTubeの違法動画に、テレビ各局が手を焼いている。NHKは「スプーの絵描き歌」の動画削除を依頼し、米YouTubeもそれに応じたが、削除直後に同じ動画がまたアップ。いたちごっこが続く。 3歳の娘がいる家庭なので、たまに「おかあさんといっしょ」を観る機会がある。その「おかあさんといっしょ」のおねえさんの書く「スプー」が話題になっていることは知っていたが、観るのは後回しになっていた。 その話題がますます膨れ上がって加熱しているので、いよいよ噂の動画を観てみると、予想以上に衝撃的な映像。腹を抱えながら観て、その後奥さんや娘と一緒にまた観たりなど、大いに楽しんだ。 娘は「スプー」ではなく「アネム」だと言い放ち。「へんなかお」と子どもなりの素直な意見も。 その話題の動画が著作権を侵害しているということで問題になっているようなのだ。当然、著作権法に抵触するのは間違いないのだが、少し考えてみた。

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「スプー」に見るデジタル・コンテンツのあり方

YouTubeの違法動画に、テレビ各局が手を焼いている。NHKは「スプーの絵描き歌」の動画削除を依頼し、米YouTubeもそれに応じたが、削除直後に同じ動画がまたアップ。いたちごっこが続く。

3歳の娘がいる家庭なので、たまに「おかあさんといっしょ」を観る機会がある。その「おかあさんといっしょ」のおねえさんの書く「スプー」が話題になっていることは知っていたが、観るのは後回しになっていた。

その話題がますます膨れ上がって加熱しているので、いよいよ噂の動画を観てみると、予想以上に衝撃的な映像。腹を抱えながら観て、その後奥さんや娘と一緒にまた観たりなど、大いに楽しんだ。

娘は「スプー」ではなく「アネム」だと言い放ち。「へんなかお」と子どもなりの素直な意見も。

その話題の動画が著作権を侵害しているということで問題になっているようなのだ。当然、著作権法に抵触するのは間違いないのだが、少し考えてみた。

デジタル・コンテンツとの付き合い方

人気の動画共有サイトのYouTube であるが、以前から違法な動画がアップされていることは指摘はされていた。今回の「スプー」の動画も間違いなく著作権は侵害しているだろう。

当然ながら著作者から削除依頼があれば削除しなければいけないだろうが、問題は削除しても意味がないことだ。YouTubeは誰でも簡単に動画をアップロードし、共有できる。また、ダウンロードする方法もあるため、削除したそばから再度アップロードされてしまうのだ。

これは、今回の「スプー」の動画に限らない。テレビ番組やアーティストのライブ映像やPVなども同じように共有されているが、これらも著作権を侵害していると削除しても意味がないだろう。

だったらサービス自体がダメなのかと言うと、一概にそうは言えないだろう。すっかり悪いイメージのついてしまったP2Pでのファイル共有ソフトも含め、技術的にはデジタル・コンテンツとの付き合い方が共有しやすいものになっていることだろう。


誰が何を侵害されているのか

さて、この「スプー」の動画を著作権侵害だということで、NHKが削除以来を出し、それを受けてYouTubeが削除をするが、すぐに同じ動画がアップされてしまい、いたちごっこだというニュースであった。

この誰でも動画をアップでき、みんなと共有できるというのがYouTubeというサイトの魅力であり、今回はそれが問題になっているのだが、はて、何が問題なのだろうか。

もちろん、著作権法に基づいて見ると、著作者はNHK側にあり、その著作者に無断で著作物となるコンテンツをアップし、誰でも見れる状態にしてしまうので、間違いなく著作権法違反になるのではあるので、法的にはまったくのクロである。

ただ、共有されるといってもここで料金は発生せず、誰でも無料で見ることができる。無償で共有されるわけだ。

例えば、他人の作ったコンテンツを無断でどこかで売っていては問題であると思う。他人が苦労して作ったコンテンツで一儲けするわけだから、それは著作者に利益が還元されるべきであり、著作権法によって守られるべきものである。

しかし、ここでは誰も儲けていない。

YouTubeが広告費を稼いだとしても、それはコンテンツというより、コンテンツを流通させる仕組みのサービスで儲けているわけで、コンテンツで利益を上げているわけではない。むしろ、実際は赤字のようなことを見たことがある。

さて、では、著作者にはどんな損害があったのか。

著作権というのは、特許権と同じような知的財産権であり、財産権、形のない無形財産を守る権利、財産を守る権利なのである。つまり、財産を守る権利。

さて、財産が奪われたのか。

先に挙げたように、コンテンツをどこかで売りさばいているようであれば、財産を奪われたと言えようが、無料で流通されただけで財産権を侵害されたと言えるのか。ただ、法律だからというだけではおかしなものだ。

事故をおこしようもない見晴らしの良い場所でスピード違反や一時停止違反を取り締まるようなものだ。ちくしょう。嫌なことを思い出した。


かえって利益があるのでは

一体、著作者のどんな財産が奪われたのか。

強いて挙げれば、将来的にそのコンテンツを買った人が無料でコンテンツを手に入れてしまったため、買わなくなってしまい、いずれ収入となったはずの利益が奪われたと言えるかもしれない。

たとえば、自動車がかってに複製されて無料でばらまかれたと考えると、メーカーにとっては恐ろしい話だ。問題だと言える。

ところが、このような有形財産とは違い、音楽や映像やテキストなどの無形財産、とくにデジタルデータとして扱われるデジタル・コンテンツの場合は、同じように考えることは難しい。特に複製が恐ろしいほど簡単に、スピーディーにできるようになってしまった。また、技術的に恐ろしく簡単にばらまかれるようになってしまったのだ。

こうなると、いままでの有形財産をベースにした理論で無形財産を守ることが不可能になってしまったと言わざる得ない。もはや防ぎきれないところまできている。

ましてや、実際はコストはかかっているとはいえ、一般にはコストを気にせず、あたかも無料で観ることができるテレビ番組のコンテンツなどは無料で共有されることに罪悪感を感じにくい。ましてや、そこから派生するパロディー作品なども、罪悪感が発生しにくい。

今回の「スプー」の動画なども、将来的にビデオやDVDで番組のコンテンツが売られる可能性はあるとしても、番組の一部分(面白いところだけ)を切り取って、話題となったわけだが、今回この動画を面白がって観た人間が、将来ビデオやDVDが販売されたとして、それを購入する人間だったのか、またここで動画を手に入れたので、将来購入する予定を止めてしまうのか。

まず、考えにくい。今回の動画を手に入れようが、手に入れまいが、買うことはなかっただろう。

先日、あるショッピング・モールでスプーのぬいぐるみを見かけた。思わず笑ってしまい、手に取ってしまった。

今回の「スプー」の動画は、あきらかに「スプー」の知名度を高めている。もしかしたら、今回のことで、「スプー」とおねえさんと番組である「おかあさんといっしょ」の知名度を高めていることにはならないだろうか。これを機に、おねえさんの普段の言動を見ようと、思わず放映中の番組を観てしまう人もいるかもしれない。

こうなると、逆に著作者のプラスになっていると考えることもできる。財産を奪ったわけじゃなく、逆に利益につながる結果になるかもしれない。

これは、今回の動画だけではなく、音楽や映像作品などに通ずる1つの考え方であり、クリエイティブ・コモンズなどの現行の著作権法に対するアンチ・カルチャー的な考え方に通ずるものだ。

もし、この「スプー」の動画が、もともとNHKより、クリエイティブ・コモンズの「帰属 - 非営利 - 派生禁止」 で提供されていたら、今回の場合は非営利であり、改変もされておらず、著作者もNHKであることが分かるので問題にはならない。

つまりは、今回のように実は著作権者の財産権を侵害していないんじゃないか、もしかしたら著作権のほうが矛盾があるんじゃないか、そんな考え方がクリエイティブ・コモンズにあるわけです。

ここから、これからのデジタル・コンテンツとの付き合い方が垣間見れるのではないでしょうか。


とはいえ問題は著作権だけじゃない

ということで、個人的には著作権法を理由に今回の「スプー」の動画を削除するのはどうかとも思うし、同じようなことで、やはり削除されてもすぐにアップされるのだろう。ここには罪悪感を感じにくく、逆にコンテンツを流通させることで面白いことが起きるということが無意識にでもみんなが感じているんじゃないかと思う。

僕が今後のデジタル・コンテンツのあり方に思うところがあらわれているニュースである。

ただ、今回は削除されても仕方がないと思っている部分もある。それは著作権を侵害しているからという理由だからではない。

それは、おねえさんがこの加熱ぶりをどう思ているかが気になっているからだ。もし、傷ついているようであれば、それはみんなでたかって一人を笑い者にするようなもので、著作権違反というよりは誹謗中傷や個人の人権の侵害といった違う部分で問題だと思うからだ。

ただ、みんなは誹謗中傷をしているというよりは、単純に笑っているだけで、テレビの「ぷっスマ」でやっているようなものともいえるので、おねえさんがこれもエンターテイメントの1つと開き直り、「スプー」と同じように知名度が上がったと喜んでくれると良いなと祈りながらも、今回の記事には名前を挙げることは止めておいた。実際に人気者度合いが上がったとは思うけどね。

ということで、著作権のありかたやクリエイティブ・コモンズと一緒に、人権などについても考えてみて欲しいニュースでした。



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